15分チャレンジ
今日はちょっと不運な日だった。
朝、満員電車でぎゅうぎゅうに詰められ、通学途中に犬の糞を踏みつけ、ユーチューブのレスバに敗北し、先生に成績が悪かったことで呼び出しを食らった。
「はあー」
重いため息をつく。
近くを照らすクリスマスネオンでさえ、私の心を明るく照らすことは不可能であろう。
そんな、尖った思想を胸に抱え込みながら歩いていると、残り数メートルかのところにコンビニがあった。
そして私の今の所持金は、500円だ。
これは‥‥‥何か買うしかないだろうに。
心を弾ませながらコンビニの自動ドアをくぐり、物色をするのだ!
疲れてるときって、購買意欲わくよねって話。
日常ー朝
カーテンを開けて、朝の日差しを浴びる。
まぶしく降り注ぐ光は、寝ても解消されずにいるストレスを容赦なく表面に浮かび上がらせてくる。
本当に最悪だと美羽は思った。
だいたい、美羽は朝目覚めるこの瞬間が、とんでもなく嫌いだった。
夜明けや目覚めは、よくポジティブなイメージとして扱われることが多いが、そんなイメージは毎日が充実していて、楽しい人が持つものだし、使うものだろうと美羽は考えていた。
ふと、時計を見るともう出発30分前だ。
「あー、しにたい」
そんな風につぶやきながら美羽はしぶしぶと部屋のドアを開ける。
もちろん、美羽とて本当に死にたいわけではない、この「あー、しにたい」は、本能ではもっと寝ていたいのでベットで目をつむりたいくて仕方がないが、学校に行かなければならないため起きなければならないという、本能とは矛盾した行動をとることによって生まれる、つまりは実質自分の生への冒涜ともいえる行動をとるという、言い換えれば死を望むといっても過言ではない行為をすることによって起きる生理的反応なのだ。
「おはよう」
「おはよう」
「おはよう」
上から順に美羽、美羽の母、美羽の父だ。
何とも覇気のない挨拶がみっつリビングに響く。
「朝ごはん置いてあるから、食べてね」
「はーい」
食卓に置かれていたのは、ウィンナー、たまごやき、ごはん、レタスだった。
いつも朝ご飯を用意してくれる母にこんなことを言うのは失礼かもしれないが、朝早く起きて毎日ご飯を作るなんて本当に同じ人間か、と朝に弱い美羽は思った。
「いただきまーす」
もぐもぐ、むしゃむしゃ。
「ごちそうさまー」
完食である。
さて、ご飯を食べるのに10分消費したので、美羽が家を出るまでに残された時間は残り20分だ。
‥‥‥支度は10分程度で終わるし、少しスマホを弄ろうと、美羽の脳内に魔が差した。
「体感時間みじかっ」
結論から言うと、残り時間は5分になっていた。
美羽は、迫りくる学校に行くという現実におびえながら、急いで家を出る支度をする。
その途中、不安をごまかすように即興で作ったオリジナルソングを歌う。
「人はいつか死ぬから~、今を生きるの~、今がダメだってダメ出ししても~逆効果症候群~、最悪~」
くそみたいに病んでる歌詞だった。
なんだかんだ言って残り時間はもうない。
美羽は、今日も家のドアを開ける。
「行ってきます」
いろいろな不安でぐちゃぐちゃしている美羽の心も、学校から帰ってくれば少しは落ち着くだろう。
おわり