モノクロームシンドローム
眠い。
そう思いながらも、スマホを見る。
もう限界だった、楽しいことなんて何もなかった。
このまま大人になって、どうなるんだろう。
ぼんやりと頭を巡らせる。
‥‥‥きっと、ずっとこのままだろう。
そう思うと、諦観が、絶望が、自殺願望が、悲しみが、涙が、後悔が、罪悪感が、憎しみや、悔しさが、
一気にわいてきて
胸が苦しくなった。
♢
―——でっかあ‥‥‥!
見たことのない大きさに、思わず目を見開く。
博物館内は休日ということもあり、たくさんの人でにぎわっていたのだが、この宝石だけは別格だ。
動物園の人気者、パンダのようにだだっ広い展示スペースに隔離され、厳重に警備され、整理券配布におびただしいほどの列を形成している”それ”は、そこまでさせるくらいの魅力があった。
人一人入れそうな大きさで、美しい光を放っている、このダイアモンドは、つい先日、世界遺産に登録されたのも納得な代物だった。
こんな美しいものを見れたのは、本当に幸運だったと思う。
しかし、僕はまだ知らなかった。
このうつくしい宝石をめぐる運命が、こんなにも残酷で、みじめなものだったなんて―――。